清掃検査の話

「大掃除」と聞いて思い浮かべるのは、年末のことだと思います。
しかし竹富島の大掃除は春と秋の2回。
しかもこの大掃除、公民館による検査があるのです。
え?検査??とびっくりしたでしょう?その始まりは「原勝負」にあったようです。
田畑の耕作方法や作物の生育状況、雑草の有無、農道の清掃、屋敷地の清掃等を競っていました。そこには、家屋敷を清潔に保つ事によって病気やケガ等を防ぐという、大切な目的がありました。
そのほかに、この家に何人の人が住んでいるのか、何頭のヤギや牛を飼っているのか、車は何台所有しているのか等を調査し、竹富島の実態を知ることも目的でした。
その名残で、今も年に2回の清掃検査と一緒に調査するので、役場の住民課よりも詳しい情報を入手でき、更新され続けるということになります。
「原勝負」は、もともと競争好きの竹富島の人達の気質をよく知った上で行われた勝負だったのかもしれませんね。
昔は不合格だと島内放送で名前をあげられ、やり直しがあったのだとか。
島内中に不名誉な放送をされてはかなわないと、必死で掃除をしたそうです。
今は名前まで発表されることはなくなりましたが、合格のシールはもらえません。
そう、合格するとシールがもらえるのです。たかが長さ七センチ程の細長いシール。
されどこのシール。この重みは竹富島の人でしかわからないことでしょう。
いつも合格する家は、家に合格シールを誇らしげにずらーっと貼りつけます。
小さい頃は、ゴールデンウィークともなると毎日庭の草抜きで辛い思い出しかありません。
しかし大人になって改めて大掃除をすると、大変なことは確かですが、こんな事も感じました。
家の前の道を掃除していると隣の家の人も道路にほうき目を入れ始めました。
ふと向こうの方を見ると、四軒くらいとなりのお家の人も前の道を掃いています。
ずっと遠くの方までほうき目でつながった道を見ていると、竹富島を島民全員で磨いているようなそんな一体感。
もちろんそれぞれの家をそれぞれが掃除しているのに、みんな同じ目的にむかっている、そんな感覚になるのです。
この時期の会話は
「掃除終わりそう?」
「合格できそうだね」
「あなたの家の庭は広くて大変そうだね」
などなど、掃除にまつわることばかり。
大変だ大変だという会話が多いのですが、「こんな清掃検査なんかやめよう」と言い出す人はいないのです。
竹富の人たちは島が美しくなることに誇りを持っているからでしょうか。
はたまた隣の芝より、もっと青くという競争心からでしょうか。
(NPOたきどぅん会報Vol.62 2019年10月 より)