朝日新聞2008年5月27日付朝刊記事

 5月27日付朝日新聞朝刊『わが家のミカタ』の記事に、
昨年12月4日に重要文化財に指定された「旧与那国家住宅」
修復にかける文化財建造物修理主任技術者の村田信夫氏の
記事が掲載されています。
 修復のプロの情熱、そして後継者育成にかける想い。
竹富島でのユイマールの精神が詳しく述べられています。
 この記事を掲載するにあたり、新聞記事をお送りいただいた
村田信夫さん、埼玉県のT.Oさん、そして快く掲載を許可して
いただいた朝日新聞社に心より御礼申し上げます。
(ta)


沖縄・竹富島。修復のプロ招き、集落総出の「ゆいまーる」
保存の技 地元で復活
 いつまでも、あると思うな技と腕。台風被害の深刻な沖縄の離島では、コンクリートの家が増え、伝統的な民家はいまやわずか。そこで招かれたのは、文化財建築の修復のプロ。厳しい仕事ぶりに最初は戸惑った島民も徐々に作業に参加、やがて集落総出の手伝いに。修復にかける情熱が島にもたしたのは、最西かつ最南の国の重要文化財指定という名誉と友情でした。
(神田 剛)
 周囲9キロ、人口320の竹富島。白砂を敷いた道路沿いに、
サンゴを積んだ石垣(グック)が続く街並みは、観光客にも人気の
スポットだ。
 だが、島は猛烈な台風の通り道。大半の家は1970年代以降、
コンクリートで補強された。景観上、杉板で覆って隠しているが、
木造の家はわずか。そんな中、旧与那国家住宅は例外的に、
13(大正2)年の建築時の姿をとどめてきた。
 母屋(フーヤ)の屋根は当時、茅葺の代わりに普及し始めた赤い瓦。
シーサーを飾る習慣もなかった。建物の四方は縁側で、玄関はない。
 柱は西表島産のイヌマキで、それを地面で受ける束石は吸湿性の
高いサンゴ。柱を湿気から守る工夫だ。
 長年空き家で傷みが進み、解体寸前だったのを
竹富町が購入。(※1)03年から保存修復が始まった。
 「ヒトがいない。モノもない。これは大変や」
 修復の指揮に招かれた村田信夫さん(62)は滋賀県教委で
文化財建造物を担当してきた修復のプロ。
 退職後も各地の現場を飛びまわるが、今回はさすがの村田さんも
驚いた。伝統的な建材も技術も、とうにすたれていたからだ。
 当然、現地の建設会社も職人も、文化財として建物を修復する
のは未経験。
 床板のクギを抜くのにバールを直接あてて傷をつける。
火気厳禁の現場で、「ま、いいさぁ」とたばこをふかす。
早々に村田さんはマジ切れ。怒鳴られた職人は現場に来なくなった。
 「いや、もう大変でした」。建設会社の根原史光さん(31)
は言う。職人との板挟み以上に参ったのは、村田さんから弟子と
見込まれ、徹底的にしごかれたことだ。
 保存修理は、建物を丁寧に解体して構造を記録。最小限の修理を
施して、再び元通り組み立てる。
 村田さんは根原さんを横に立たせ、作業の手順や修復の技術を
たたき込んだ。
 「気安い職人を連れてきたら話は早い。でも、それやと島に建物
を直せる人間が育たへん」と村田さん。「技術を持つ者は、誰かに
伝えなあかんのです」
 一方、村田さんは、島の人たちに頭を下げ、修復への協力を
頼んでまわった。
 入手が難しくなっていたイヌマキは、古材を集めていた人が
譲ってくれた。
 さらに救いとなったのは、民宿を営む松竹昇助さん(79)
との出会いだ。
 島には昔、家の新築や修繕を互いに手伝う習慣「ゆいまーる」
があった。中でも松竹さんは床の下地を結ぶ縄作りの名人だった。
 村田さんは、松竹さんを先生役に、島の小中学生にも作業に
参加してもらった。子どもたちは、土踏みや竹編みを初めて経験。
数十年ぶりにゆいまーるの光景がよみがえった。(※2)
 3年越しの修復保存を終えた旧与那国家住宅は昨年12月、
国の重文に指定された。しかも日本最西端の、そして最南端の。
 今月、久々に島に渡った村田さんは、旧与那国家の縁側で
根原さんと向き合った。いまや島で4軒目の民家修復に取り組む
根原さんは言う。「随分しごかれたんで、もう余裕ですよ」
 苦笑しつつも、その成長に目を細める村田さんは、さらに南の
波照間島で民家調査の依頼を受けている。
 同行するのはもちろん、右腕となった根原さんだ。
 記事訂正:
(※1)
竹富町は家屋を購入したのではなく、所有者から寄贈されている。
(※2)
数十年ぶりとあるが、家屋修復作業でのゆいまーるを指している。
ゆいまーるは現在でも行われている。
当記事は朝日新聞社に承諾を得て転載しています。(2-0642)
その他の無断転載は固くお断りいたします。

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