小さな島の大きな取り組み(八重山毎日新聞2/6付社説)

本日の八重山毎日新聞社説には、
「小さな島の大きな取り組み」
として、竹富島のデイゴ保全活動に関する
論説が展開されています。
竹富島の取り組みを評価していただいている
ことを深く感謝するとともに、実行委員会をしっかりと
組織し機能させ、大勢の皆さまにこの目的を広報し、
そして趣旨を理解してもらい、デイゴの保護活動を通じて、
私たちの島の自然・文化遺産を守り、
さらには訪れる皆さまに安らぎを与えられる島
としてあり続ける努力したいと思います。
改めて身の引き締まる思いです。
(ta)


小さな島の大きな取り組み
―デイゴ保全に立ちあがった竹富島―
 いまだ対策を打ち出せぬ行政
 かつて石垣小学校の校庭に、ガジュマルの大木があった。樹齢百年余の
巨木だった。台風で倒伏したが、同校のシンボルとして多くの卒業生の心
に刻み込まれている。
 学校によって異なるが、子どもたちの身近な樹木にデイゴがある。3市
町の公共施設に導入され、特に学校緑化木として多くのデイゴを植えた。
これらの木々は長い歳月をかけて生長し、子どもたちの成長を見守ってきた。
春から初夏にかけて咲く深紅の花は、大勢の思い出となっているだろう。
 そのデイゴがヒメコバチの寄生で枯死し、切り倒されるケースが相次い
でいる。被害の原因が解明されたのは2005年だ。発生メカニズムはまだ
解明されていないが、08年には防除に効果的な薬剤が開発されている。
ところが薬剤が高額なため、財政難を理由に防除はいまだ進んでいない。
 被害木の枝打ちや、枯死したデイゴの撤去作業がやっとで、依然として
放置状態にある。事態の深刻さを知りつつ、何ら対策を打てない。全滅も
やむなしというのだろうか。
 行政に頼らぬ独自取り組み
 竹富島で先日、デイゴを守る準備委員会が発足した。同会の調査による
と、島にあるデイゴは127本。ほとんどの木がヒメコバチに寄生され、防除
費は約400万円と試算された。
 人口300人余の小さな島で、全てのデイゴを守ろうとする試みは一大プロ
ジェクトだ。住民だけで防除費を捻出(ねんしゅつ)は厳しい。このため
公民館会や郷友会員らが結束して内外に窮状を訴え、募金協力を求めると
いう。
 この取り組みは高く評価されよう。重要な世持御嶽のデイゴが被害に遭ったことがきっかけに、まず地域で危機意識を共有し、動き出したのである。
 近年は金銭を投じればあらゆることができる。樹木に関しても、枯れれば
植え替えて立派につくりあげることも可能だ。だが長年の歳月をかけて育った木の価値は、簡単に金銭には代えられない。
 現在ある古木を尊び、それを害虫から手当てして守ろうという竹富島独自
の取り組みは、行政に依存している私たちに、ひとつの問題を提起しているといえよう。
 市民憲章運動とは何か
 石垣氏には市民憲章推進協議会がある。美しい自然と郷土文化を守り育て
「文化の町」「観光の町」づくりに励む―という宣言に沿い、部会活動で
花と緑の運動を推進している。
 ところが実践活動はどうだろうか。
確かに石垣島マラソンやトライアスロンに向けて学校や婦人会をはじめ各
団体に花の種や苗を配り、美しい花を咲かせている。
 だが一連のデイゴ枯死問題などに直面しても声が上がらない。イベントの
美化活動も重要だが、木々の命をはぐくむ活動を繰り広げてこそ真の意義が
あろう。
 残念ながらデイゴ枯死問題で県や市の対策は講じられず、公共施設内の
デイゴの本数、ヒメコバチ被害状態すら把握されていないのが現状だ。
 確かにデイゴを守るためには、相当額の費用を要する。厳しい財政状況で
は対応にも苦慮し、効果的な防除で専門的な判断も求められよう。しかしそ
のまま放置し続ければ、大切な木々を失うだけだ。
 大切とは何か、なくなっても良いものなのか、行政に問いかけたい。予算
はなくとも、実態調査は可能だろう。動かなければ何も解決しないのである。

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