竹富島百科

ジッチュ

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「竹富島種子取祭の芸能」公演で演じられる演目のひとつに、 舞踊《ジッチュ》があります。 この舞踊は「エイサ」という小気味良い、囃子声に合わせて足を踏み込み、 小さなクバ笠をクルリとまわす、粋な所作が印象に残ります。 舞踊の小道具には、数種類の笠がありますが、 《ジッチュ》で用いられるものは、小さなクバ笠に村番所の紋章の入った 「ジッチュ笠」と呼ばれるものです。 また、「ジッチュ」とは「10人」という意味だと伝わっていますが、 「シチュシチュ」という、踊り手の掛声から命名されたとも考えられます。 《ジッチュ》が片袖を抜いて踊られことには、 次のような話が伝わっています。 人頭税時代、10人の子供たちを立派に育て上げながら、 毎年の年貢を完納した、ある農民がいました。 彼の模範的な所業は、琉球国王の聞くところとなり、 表彰されることになりました。 そして、夫婦と10人の子供たちは、国王に拝謁することになりました。 しかし、貧しさゆえに、子供たちの10人分の着物を新調することができず、片袖分の布を節約したとのことです。 そのため、舞踊《ジッチュ》は片袖を抜いた着付けになっています。 そして国王に拝謁できた喜びを表現しているといいます。 だから舞踊の構成は、前を向いて国王を畏れ拝み、 後ろを向いて親の顔を見て喜ぶ子どもたちを表現した、 ふたつの型の組み合わせで踊るといわれています。 片袖を脱いで踊ることについて別の説もあります。 それは仕事の都合で遅れた踊り手が、慌てて衣装を着たので 片袖が脱げたままで踊ったところ、 その舞い踊る姿のほうがが粋だというので、 片袖を脱いで踊るようになったという説です。 粋な出で立ちの由来には諸説ありますが、 漁村の若い男女の労働を描いた琉球舞踊《谷茶前》や、 《かせかけ》や能《砧》の労働に従事する女性の着付けが、 《ジッチュ》の役柄と同様に、片袖を抜いた着付けが ひとつの型になっていることにも注目できます。 尚、舞踊《ジッチュ》の軽快な曲は、 沖縄本島の民謡《唐船どーい》の替え歌になっています。 《唐船どーい》は、沖縄の祝宴のフィナーレを飾り、 人々を乱舞させますが、タナドゥイ(種子取祭)に世持御嶽の庭で 《ジッチュ》が踊られるとき、タナドゥイにふさわしい歌詞がのり、 元歌とは異なった味わいを醸します。 参考文献○「ジッチュ」『芸能の原風景(改訂版)』、上勢頭亨「ジッチュ踊り」『竹富島誌 歌謡・芸能篇』参照。                                (YI) …

種子取祭の芸能

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今年度の種子取祭も無事終えることができました。 ありがとうございました。 祭りのあとの余韻に浸る間もなく、 11月3日には、全国竹富島文化協会創立10周年を記念して、 浦添市の「てだこホール」にて、 「種子取祭の芸能」と銘打った芸能公演が開催されます。 (午後6時開場・午後6時30分開演/入場料2000円/問合せ℡0980-85-2488) 本公演は、芸能を通じた後継者の育成を大きな目的としていますが、 沖縄本島在住の郷友のみなさんにおかれては、 「うつぐみの心」に触れる絶好の機会となるにちがいありません。 そして、テードゥンヒトゥ(竹富人)であることの 誇りを自覚することになるでしょう。 また、一般の方々には、種子取祭の芸能の神髄を ご覧いただきたく存じます。 今朝の『八重山毎日新聞』では本番に向けた合同稽古の様子が、 報道されていました。 『琉球新報』にも、本公演のお知らせが、 「短信」として載っています。 当日の演目は次のとおり。    棒         ジッチュ         マミドー         馬乗しゃ   狂言「鍛冶工」         舞踊「赤馬節」         舞踊「しきた盆」         舞踊「高那節」         舞踊「下原節」         舞踊「海晒節」         狂言「世曳き」         舞踊「大浦越地節」         舞踊「胡蝶の舞」         舞踊「スル掬い・タコ捕り」         舞踊「久高島・海上節」         狂言「鬼捕り」                                (YI) 『八重山毎日新聞』2007.10.29 竹富島種子取祭の芸能 浦添市てだこホールで公演 本番向け合同練習  全国竹富島文化協会創立10周年記念・浦添市てだこホール開館記念「竹富島種子取祭の芸能」(主催・全国竹富島文化協会)が、11月3日に浦添市てだこホールで開催されるのを前に、玻座間、仲筋両民俗芸能保存会石垣在会員の合同リハーサルが28日、石垣市健康福祉センターで行われた。  同文化協会(高嶺方祐理事長)の10周年の節目を記念し、玻座間、仲筋両保存会が合同で種子取祭の庭の芸能、舞台の芸能を本島では初上演するもので石垣在会員ら総勢約100人が参加する。  4日午前には、竹富島の精神文化の柱となる西塘の功績を確認し、島人の連携を図るとともに、今後の島おこしを図ろうと、首里城や園比屋武御嶽で西塘作の「しきた盆」の斉唱と「巻き踊り」も行われる。  舞台「種子取祭の芸能」では、庭の芸能の棒や「ジッチュ」「マミドー」「馬乗しゃ」、舞台の芸能の「鍛冶工」など狂言3演目と「しきた盆」など代表的な舞踊9演目が披露される。  合同練習では、石垣在竹富関係舞踊研究所や郷友会メンバーらが舞踊や狂言のけいこに励んでいた。  入場料は2000円。問い合せは(85-2488、ゆがふ館)。 …

種子取祭第8日目

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昨日は玻座間村の奉納芸能を無事に終えることができました。 ありがとうございました。 本日、種子取祭第8日目(辛卯)は、 ムイムイヌニガイ(萌え萌えの願い)の日。 「ムイムイ」とは発芽した種子が萌え出るさまの意で、 作物の繁茂が祈願のテーマ。 当日の芸能は主に仲筋村が担当します。             (YI) …

種子取祭第2日目

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昨夜は無事にトゥルッキを終え、いよいよ祭祀期間に入りました。 種子取祭第2日目乙酉の今日、午後8時30分より、ゆがふ館にて、 恒例の「種子取祭教室」を開催します。 映像を鑑賞しながら、祭祀の日程や意味を理解し、 祭祀でうたわれる古謡を練習し、 みんなでうたえるようにすることが目的です。 大勢のご来館をお待ちしております。 さて、第2日目(乙酉)、第3日目(丙戌)、第4日目(丁亥)は、 主にタナドゥイの供物や料理の準備がなされます。 各家庭ではすでにピン(ニンニク)の用意も済み、 神饌であるイイヤチ(飯初)の餅米や粟の準備を始めます。 また、各集落の踊部・狂言部では、 奉納芸能の稽古と仕上げが着々と進められています。 竹富島では、タナドゥイでの芸能が 神をもてなすための大切な供物としてとらえられているのです。 (YI) …

台風8号

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台風8号の襲来です。 台風8号の進路は、先島諸島よりやや南になるものの暴風圏内に入るため、定期船は本日9:45石垣発以降は欠航となっています。 かりゆし館、ゆがふ館は休館です。 竹富町指定文化財の前與那國家も台風対策です。 本日、役場から職員の方2名が前與那國家を訪れ、雨戸の隙間の内側と外側に竹を置き、針金で固定する作業を行ないました。 隙間をなくすことによって、台風が運ぶ雨やゴミなどの室内への侵入を防ぎます。 (TA)…

真栄(マサカイ)

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「真栄節」の主人公である、真栄は実在の人物であり、1701年、大山家の次男として生まれたと伝えられています。 1719年には、分家し小山家を建て小山家の祖となります。分家の際、大山家より国仲原の長山畠一筆を譲り受けますが、当時の人頭税では税を納めるどころか、食べるのもままなりません。 そこで、真栄は思案を巡らせ、一念発起竹富島を離れ、西表島仲間(現在の大富付近)へ渡り大原田の港口を開田し稲作に従事します。 当時は個人が自由に移住や転居ができない時代であり、かつ人頭税が生活に大きくのしかかっていました。 真栄は、税を納めるために荒地を開墾するなどの精神的・身体的に苦痛が伴うことを自らで選び行動しました。この行為から、真栄は島人から称えられ、「真栄節」として今日まで名が残されています。 「真栄節」 1 まりや たきどぅん  (竹富島に生れて)    すだてぃや なかまぬ まさかい  (西表島仲間村で 生活した 真栄)   ウヤキ ヨーヌ 世バ 直レ  (豊カナ 世ニ 直レ) 2 いなきゃぬゆい なぐぬ すみゃんどぅ  (何故 どうしたわけで)   なかま くいおたる  (仲間村に 移住されたのですか)   ウヤキ ヨーヌ 世バ 直レ  (豊カナ 世ニ 直レ) 3 うはらだぬ みなぐちぬ  (大原の田 水口の田が)   ゆやんどぅ   (欲しくて 移住しました)   ウヤキ ヨーヌ 世バ 直レ  (豊カナ 世ニ 直レ) 4 むちぐみぬ しるぐみぬ  (餅米が 白米が)   うり ふしゃんどぅ  (これが 欲しくて移住しました)   ウヤキ ヨーヌ 世バ 直レ    (豊カナ 世ニ 直レ) ● 上勢頭 亨 著/『竹富島誌…

ちょっとした休憩所

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フクギ(福木)オトギリソウ科フクギ属 実は8月~9月頃に黄色く熟します。 材は緻密で白く硬く建築材としても使用されます。 なお、樹皮は黄色の染料として用いられています。 沖縄の島々でみることができる樹木、フクギは防風・防火という重要な役割を担っています。 沿海を航海する折、島々に黒っぽいほど緑の濃いフクギ並木を見ると、集落が近くにあると判断したそうです。 連日厳しい暑さが続く夏の日々では、私たちのちょっとした休憩所の役割も果たしてくれます。 樹齢数百年と云われる写真のフクギ。 少しのんびりと木々の下で休みながら、 遥か昔の竹富島について、 想いを馳せるのはいかがでしょうか。  (TA)…

キオビエダシャクの交尾

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キオビエダシャク チョウ目 シャクガ科 幼虫がイヌマキの葉を食べるため害虫とされています。 九州南部から台湾にかけて分布しており、成虫は花に集まり 吸蜜します。一般的には昼間に活動するそうですが、夜間の 交尾行動を撮影しました。 …