岡部伊都子さんを悼む


随筆家の岡部伊都子さんが、29日、肝臓癌による呼吸不全で逝去されました。
岡部さんと竹富島の繋がりは大変深く、特に竹富島で育った子ども達は多大なる恩恵を受けています。
1968(昭和43)年初めて竹富島を訪れた岡部さんは、故上勢頭亨翁をはじめとする島人との交流を温め、竹富島の伝統や習慣、美しい自然、穏やかな生活に触れ、一時は竹富島に移住を決意するほど島を愛されていました。しかし、生来から病弱なお体のため移住を断念します。
こうした経緯のなか、1972(昭和47)年沖縄県が日本国に復帰する5月15日に、西集落に購入した古民家とご自身の蔵書を、島の子ども達に寄贈します。これが竹富島の「こぼし文庫」始まりです。

2004(平成16年)年ご来島時のスナップ。岡部さん最後の帰郷と
なりました。 (上勢頭芳徳氏写真提供)
当時は、本を借りるにも石垣島に渡らなければなりませんでした。岡部さんの配慮を感じ取った母親たちが、「こぼし親子読書会」を結成し、子ども達に本の読み聞かせを始め、島の子ども達に読書の楽しさを教えてくれました。現在でもこの活動は続いており、2006(平成17)年には第36回野間読書推進賞を受賞しています。
その後も、岡部さんは竹富島の子ども達に本を贈り続けると同時に、竹富島の伝統文化を学びながら「島の心」に触れるとともに、この素晴らしい文化遺産を未来に継承するためにとの趣旨のもとに1997(平成9)に設立された全国竹富島文化協会の特別顧問も務められています。
設立にあたり、岡部さんは次のように述べられています。
「うれしいウツグミ魂の試み初めて竹富島へ渡ることができたのは、1968年4月のことでした。なんと清らかで静かな美しい島、島人(しまんちゅ)の礼の深さ、情の濃さに抱かれて「この世にこんな夢ランドがあったのか」と、驚きました。以来、どんなにせつなくこぼしさま(=竹富島の子供たち)を思い、多くを島に学んできたことでしょう。
全国竹富島文化協会が創られる由、うれしいうつぐみ魂がよみがえりつづけます。今日も、南の空を仰いでいます。」
岡部伊都子さんの竹富島を愛する精神を今後も忘れないように、私たちは島の伝統文化を守り続けたいと思います。
合掌
(ta)