佐野滋「町並みが花に埋もれる竹富島」

昨日(12/9)の『八重山毎日新聞』に、
佐野滋氏の随想「町並みが花に埋もれる竹富島」が
掲載されています。
短歌を交えたエッセイは毎回楽しみです。
今回は、11月に開催された「輝く町並み写真展」の
会場での一コマを交えて、
竹富島のまちなみをアピールしてくださいました。
ありがとうございました。          (YI)


佐野滋(東京・杉並区在住)「町並みが花に埋もれる竹富島」
『八重山毎日新聞』2007.12.09
 竹富島の町並みが、文化庁から「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されて今年20周年になるのを記念して、全国に残る歴史的な町並みの姿を八重山地方の人々にも知ってもらうと同時に、竹富島の町並みのすばらしさをあらためて実感してもらおうと写真展を思い立ちました。
 現在、全国にあるいわゆる「伝建地区」の町並みのうちこれまでに自分の足で訪れたのは、20カ所をこえたところです。その中から14カ所の町並みの写真およそ100枚を選んで、11月6日から18日まで石垣市立図書館で「輝く町並み」写真展を行いました。
 展示の初日、桜の花が春のそよ風にゆれる秋田県角館(かくのだて・仙北市)の黒い板塀に囲まれた武家屋敷の写真をなつかしそうに見入っている女性に出会いました。「わたし、この町に住んでいたことがあります。」
 また、かつて全国的に活躍した近江商人の故郷、近江八幡市の商家の町並み写真の前で「ここは誰々の家…」と説明してくれた男性もいて、八重山に住む人々もさまざまな人生を歩んでいることをつくづく感じさせられました。
 早くから西洋とのかかわりが深い長崎市の東山手地区には、オランダ坂の石畳の道にそって洋風の住宅や学校の建物などが並んでいます。
 古い白壁の建物が川の水面に美しい影を落とす倉敷の商家町。
 長野県の木曽谷にある旧中山道の奈良井宿は、江戸時代の昔に連れ戻されたような雰囲気をいまもとどめています。
 竹富島は、いつ訪れても町並みがとりどりの花で埋まっています。私がこれまで訪れた町並みのうち、これほど花々に囲まれたところは他にありません。それから、竹富小中学校の校舎に描かれた種子取祭の壁画も、島の町並みに趣をそえています。
 このたびの写真展の会場で多くの人々と話す機会があり、また会場に用意したノートを通して、人々の思いが私の心に伝わってきました。
 「一度壊したものは元に戻りません。歴史的に価値のあるものは、みんなで保存しなければなりません。古い良いものを見据えて、前に進むことも必要だと思います。」
 「昔の建物には、とても日本らしさを感じます。その中でもやっぱり竹富島は最高です。真っ白な道、サンゴの石垣と赤瓦、カラフルな花は沖縄らしさを感じさせます。ずっとそのままであつてほしいと思います。」
 そしてさらに何人もの方々が「感動した」「写真展、どうもありがとう」と書いて下さいました。会場のノートを通して八重山の人々と心の交流が出来、私の胸に何やらこみ上げてくるものがあります。会場にわざわざ足を運んで下さった方々、会場を提供して下さった石垣市立図書館、その他大勢の方々に心からお礼を申し上げます。「にぃふぁいゆ」。
  ○島人が心ひとつに竹富島の
   町並み護りて二十周年
  ○この町にかつて住みしと語りたる
   女性の瞳かがやきてあり
  ○竹富島の花に埋もれる町並みは
   生命力あふれる八重山の宝
  ○「ありがとう」とノートに記す人ありて
   吾は応えん「にぃふぁいゆ」と
  ○劣等に冬来たりても八重山の
   人の心はなお温かき
  ○町並みの写真の展示終えて今
   帰京する吾島去り難し

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