『竹富島の声』

 今回、みなさまにご案内するのは、
1971(昭和46)年、八重山地方を大干ばつが襲い、
さらに翌年の日本復帰を控え、通貨切替など
不安定な時代に発表された『竹富島の声』です。
この文書が発表された背景には、
本土資本による竹富島の土地買収が本格的に始まった
年でもあったのです。
【結局、島の土地約三分の一を本土資本に買い占め
られましたが、島の有志によってその土地は買い戻され、
本土資本による島の開発は阻止されました。】
精神的、物質的両面で大変苦しかったであろう先人たちは、
それでもなお島を守ろうと苦闘します。
 今なお輝きを失わない『竹富島の声』には、
先人たちの島を愛する思いが文面に満ち溢れています。
そして、先人たちの思いは、今なお島で生き続けています。
(ta)


 『竹富島の声』
 自然とともに生きてきた美しい沖縄の面影。
竹富島は600年の歴史を抱いて、ひっそりと存在してきました。
清く静かな島のいぶきは不安定な現代世界の情勢のなかで、まことに
貴重なものだと、島を訪れる人びとはこもごもその印象を語ります。
島に住む私どもも故郷の良さを新たに知って、
いっそう仲むつまじく暮らしてきました。
 ところが、本土復帰を前に、一部の不動産業者や本土観光資本、
その他の企業などがこれまで見捨てていた先島に目をつけ、巧妙
な手段で買収をはじめました。若者が島外にでた留守の島を、
資本をバックに安く買いしめて、あくどい利益をあげようと
しているのです。
 あの人頭税の重圧に耐えて生き抜いた祖先が、
血と涙と汗で守り育ててきたこの心の島、コバルトブルーの海、
白くつづく海岸線が汚染される、整然とした白砂の道が
ゴミ捨て場となる、赤瓦の屋根の家々や茅葺の家々が、
俗悪な観光施設になるかと思うと、
わたくしどもはじっとしていられません。
先祖の尊いいのちの遺産をいまになって売ることはできない。
いまものこる民芸品の島、
民俗芸能に生きる島の誇りを僅かなお金のために
見失ってはならない。
金は一代、土地は末代です。
いったん奪われては、もうもとには戻れないのです。
 外部資本の進出による観光開発は、島の諸施設を独占し、
島のただずまいを破壊し、島の人情を荒れさせてしまうでしょう。
みやげ物が売れたり、住民が従業員として雇用されたりする
とはいっても、それでは「自分の自主的な生活はできない」
ことになります。
どんな契約を結んだとしても、
結局は土地所有権の喪失と経済的な圧力のために
「自分の島が自分の島ではなくなり」ます。
住民の発言権が弱くなり、すべて「使う側」の意のままに、
島が変えられてゆくのです。
 自然も人間も、企業のより大きな利潤追求のため
むざむざ使われる、都会的な娯楽施設が乱立して
子どもたちの清純さも傷つけられる、
住民同士の人間愛までも
が企業にあやつられてバラバラにさせられ人間らしさを失う、
ついにはバー、キャバレー、ボーリング場などがたって、
歴史と伝統の竹富島も狂態と汚染の島になるのではないかと、
心配で心配でたまりません。
 このような悪条件に追い込まれて、島の住民がいま、
故郷を無くするか、生かすか。
はたまた、金か心かと真剣に考えています。
郷土竹富。生れ島竹富。心の島竹富。
いまこそ住民自身がたちあがって、
自分の心と自分の手で島を守り生かさねばなりません。
島がとりかえしのつかない姿になるのを、なんとしてでもふせぎ、
人間が人間らしく暮らせる島として、産業をたかめ、
生活向上をめざして努力したいのです。
 このたび、やむにやまれぬ情熱をもつ島の住民が集って
「竹富島を生かす会」を発足させました。
互いに「頑張ろう」と励まし合っています。
しかし無念なことに、昨年未曾有の大かんばつと猛台風
に見舞われ、島民の生活はたいそう苦しいものとなっています。
さらに1ドル308円という円切りあげは、
ただでさえ乏しい経済をますますひどくいためつけられました。
わたくしどもも最善を尽くしますが、
どうか島の現状をお察しの上、「竹富島を生かす」運動にご協力下さい。
厚かましいお願いですが、
お気持いっぱいのお志を送っていただければ、
島を生かすエネルギーにさせていただきます。
どんなに力強いかもしれません。なにとぞ熱いお力ぞえを。
と心からお願い申し上げます。
 竹富島を生かす会
 代表発起人  大山 貞雄  島仲 長正  上勢頭 亨
        根原 真雄  小底 朝泉  上勢頭 昇
        小浜 方要  前本 隆一  安里 亨
        富本 忠

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