『八重山毎日新聞』2008.01.30

■問われる「竹富島憲章」
 『八重山毎日新聞』「社説」欄
 ○島の人々に戸惑いと反発
 島の人々が憲章を制定し懸命に守ってきたその昔ながらの集落形態が国の「町並み保存地区」の指定を受け、今では全国でも有数の観光地となっている竹富島が、リゾート開発計画に揺れている。去る21日の説明会では、島の住民たちから容認論の一方で、事前説明もないまま既に伐採も始まっているということで反発や戸惑い、懸念の声が上がったという。
 それはそうだろう。竹富島憲章はいまから35、6年以前の本土復帰前後に相次いだ本土企業の進出、あるいは大型開発から島を守るために土地を「売らない」「汚さない」「乱さない」「壊さない」「生かす」の5項目を基本理念に制定され、人口300人余の小さな島は年間42万人余の観光客が訪れる全国的にも有名な観光地となっている。
 それだけに、「リゾート開発されるとこの島はどうなるだろう」「これまで何のために30年余も懸命に町並みを守るためにがんばってきたのか」と島の人々が戸惑い、不安や反発を感じているのは確かだろう。そういう意味では「竹富島憲章」の意義と「町並み保存」のあり方が問われているといえよう。
 ○赤瓦木造家屋50棟を建設
 開発計画では島の東部の土地13ヘクタールに島の景観にあわせて宿泊施設として赤瓦屋根の木造家屋50棟のほか、レストランやプールなどのリゾート施設を建設。2010年の早い時期の開業を目指しているという。
 同問題が島の人たちに戸惑いを与えているのは、その開発を計画している事業者が、これまで竹富島憲章の制定や町並み保存の中心となって尽くしてきた島の有力者ということだ。そしてその根底には復帰前に本土企業から買い戻した土地の所有権が、抵当権の問題で都内の企業に移るということがあり、そのためむしろ自らがリゾート開発したほうが島のために良いという思いで本土企業の支援を受けて計画したのかもしれない。
 確かに土地の問題は無視できない島の問題だろうが、さらに大事なことは、このリゾート開発が町並み保存地区の竹富島にとって良い結果をもたらすのか、悪い結果となるのかということだろう。
 その点は事業者側も、宿泊施設の家屋の高さを6、7メートルに制限、さらに棟ごとに石垣で囲み、集落内の民家と同じようにするなど最大限に配慮の考えを示している。また島内の民宿と競合しないよう宿泊料金を高めに設定し、民宿とは異なった客層をターゲットにするという。
 しかしそれでも竹富島はやはり小さな島であり、沖縄の原風景があるということの小さな島の景観に、果たしてこのような大型リゾート施設がマッチするかどうか、あるいは似合うかどうかだろう。
 ○原点はなんだったか
 この問題はこれから竹富町も巻き込んでさらに島の内外で議論が行われるだろうし、その中から島の人々がどう判断するかだろうが、要は現在の町並み保存中心の観光で島の魅力は色あせてマンネリに陥り、年々観光客が減ってきているというなら、リゾート計画も十分に検討の余地はあるだろう
 ところが竹富島の観光客は平成に入ってからだけ見ても、元年の8万6千人が毎年増え続け、16年の35万5千人が17年は41万6千人、18年は42万4千人にと40万人台に到達。島の観光は沖縄ブームにも乗って色あせるどころかますます好調を持続しているのである。
 竹富島は長野県の妻籠宿をモデルにして憲章を作り、町並み保存に指定された。さらに岐阜県の白川郷も妻籠をモデルに世界遺産に登録された。そしていずれも大型開発を排除し「みんなで町並みを保存したから今の活性化がある」と大成功を収めた。妻籠は運動の原点を忘れないようにと憲章に「初心忘るべからず」を座右の銘として記している。
 竹富島も当時は本土企業が対象だったが、開発から島の町並みを守るためが原点だった。今回の問題は島の行方を大きく左右するものだけに事業者、住民側とも十分な論議をすべきだろう。そこで留意すべきは「竹富島」というブランドは竹富島だけのものでないということだ。
■お年寄りら6人参加 転倒予防教室開く
 『八重山毎日新聞』第3面
 軽い運動やストレッチを通じて、高齢者が転ぶのを防ごうという転倒予防教室「ぴんぴんクラブ」が今月から竹富島まちなみ館で開かれており、毎週水曜日、6人のお年寄りが参加している。
 町社会福祉協議会が町からの委託で実施している介護予防事業の1つ。65歳以上で、運動機能に低下があるなど転倒を予防する必要のある在宅高齢者を対象に実施している。1月8日から3月12日まで合わせて10回の開催を計画している。
 町社協では、竹富島以外の町内各地でも転倒予防教室を開催したい考え。

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