『八重山毎日新聞』2007.12.16

変わりゆく八重山の自然と、文化や暮らしを
見つめ直そうはじまった「八重山の針路と選択」(『八重山毎日新聞』)。
今日はその第65回。
町並み保存発祥の地「妻籠宿」(長野県南木曽町)と
「白川郷」の観光のあり方から、八重山を映し出そうとしています。
両者ともに観光地として成功し、高い評価を得ていますが、
世代交代とともに、町並み保存の原点に立ち返ることを、
共通の課題として抽出しています。
今年もあとわずかになりましたが、
2007年は、竹富島のまちなみが、重要伝統的建造物群保存地区に
選定されて20年の節目でもあり、
原点を振り返る、先載一遇の好機でもありました。     (YI)


八重山の針路と選択65『八重山毎日新聞』2007.12.16
第3部まちづくり24白川郷妻籠宿編
 町並み保存の発祥の地として江戸時代の古い宿場町の形態を残す「妻籠宿」(長野県南木曽町)と合掌造り家屋の農村風景が95年12月に世界遺産に登録された「白川郷」(岐阜県白川村荻町)。いずれも、復元した町並みが観光資源となり、観光地として成功している。しかし、観光の弊害で、世代交代とともに町並みの保存に対する意識が変化している、といわれ「原点に立ち返る」ことが共通の課題となっている。
■景観あっての観光
 両地域とも、観光が地域の基幹産業で、住民の大多数が直接・間接的に観光業に携わっている。その観光を生かすために両地域ともさまざまな取り組みを行っている。
 妻籠宿では、写真に撮られることを意識し、看板類は通りと並行に出すことを基本に最小限に止め、土産物類は軒から外に出すことを禁止。電線、電柱類の移設など、古い町並み景観を維持している。
 白川郷では、休耕田を復元する一方、保存地区での新たな家屋建築を禁止。増築も元の家屋の1.5倍までに制限。集落景観の変化を防いでいる。
■公平な富の分配
 大量に訪れる観光客は、宿泊料金や土産物購入などで地域経済を潤している。しかし、両地域とも一部の実業家が富を独占するのではなく、地域で観光業を営む者すべてに行き渡っている。
 妻籠宿では、店舗を1軒1店舗2業種までと制限。宿泊人数も10人程度となっている。
 白川郷でも、宿泊人数に制限はないものの「家族でお客を持てなし、触れあえる人数」として、15-16人程度に押さえている。
 また、新たな家屋を建築できないことで営業は、既存家屋に限られ、規模拡大の歯止めになっている。
■初心忘るべからず
 両地域とも「売らない、貸さない、壊さない」の保存優先の3原則からなる「住民憲章」を制定し、町並み保存に取り組んで約40年。復元した町並みが観光資源となり、観光地として成功している。
 しかし、世代交代とともに町並み保存に対する意識が「観光のための保存」へと変化しつつあるようだ。
 過疎化の波に洗われ、貧しく、苦しい時代を味わった両地域のお年寄りからは「昔はどの家もギリギリの生活を送っていた。町並みがなければ今ごろはどうなっていたか…」(妻籠宿)「ご先祖様は立派。これがなかったら村がなくなっていたかもしれない」(白川郷)と、村存続の危機を救った町並み保存に対する感謝の気持ちが聞かれた。
 「保存された町並み、景観があってこその観光」。「初心忘るべからず」。保存の原点に立ち返ることが両地域共通の課題であり、町並み保存を目指す全国共通の課題ではないか。

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