水牛車営業所移転問題を考える

3月26日付八重山毎日新聞『論壇』にて、
上勢頭芳徳 元竹富島まちなみ調整委員会事務局長
(現喜宝院蒐集館長)の記事が掲載されています。
水牛車移設問題のこと、竹富町議会の決議事項。
様々な思いが文面から滲んでいます。
 
これらの事は、竹富島だけなく、行政も含めて乗り越えて
いかなければならない課題です。
(ta)


 3月18日竹富町議会本会議に提案された「竹富町歴史的景観形成
地区保存条例」の一部改正案が賛成少数で否決されました。新聞報
道で見る限り議員諸氏の理解が得られず、当然議決されるべき事項
が議決されなかった結果を残念に思います。これまで竹富島の先人
とともに営々と築き上げてきたものが、一瞬にして否定された感じ
です。この件にかかわってきた者として、遅まきながら議員諸氏な
らびに読者諸賢の認識を頂くべく経緯を披瀝致すものです。
 
 問題となった「仮設の工作物の新築、改築、増築または移転は許
可を受けることを要しない」という項目は、まちなみ保存調整委員
会で現状変更申請を協議する中で、以前から懸念されていたことで
した。町の条例ではそういっていても島をきちんと守っていくため
には、仮設であっても届けを出してもらって協議してきました。
 竹富島憲章もそうですが、この条例も自分の島を美しく守ること
に異議を唱える人があろうはずがない、という性善説に基づいたも
のです。法治国ですから法律、条例を守ることはもちろん大事なこ
とですが、小さい地域ではそれ以上にまずお互いの美意識が前提で
す。だから美しく守って来られたし、それが観光資源となっている
のですから当然のことでした。
 だがそういった島の当然のことが通じない人が表れるに至り、
この条項を改正して、届け出を義務付けなければならない事態に
なりました。そこで4年前から「景観形成マニュアル」の見直しで
この条項を改正することになり、昨年3月には町伝統的建造物群
保存地区等保存審議会から答申が出されました。すぐに議会に出
しておけば当然のごとく可決承認されていたはずなのに、
「竹富観光センター」の水牛車営業所仮設移転問題と時期が重なっ
てしまいました。その意味においては「後手後手に回っている」
と言われて仕方ないでしょう。
 しかしあたかも「水牛車事業者の締め出し」を図ったように受け
取られ、議員諸氏の賛成を得られなかったのは返す返すも残念で
す。「業者と行政の努力期間を置くべし」とも言われますが、この
移転問題は今に始まったことでなく、3年前から竹富公民館議会で
はこの場所は不適当との決議もなされ、総力を挙げて民間代替地の
斡旋(あっせん)を繰り返してきました。一企業のためにここまで
やるのかという声もでたほどです。
 仮設であろうがなかろうが建築基準法の、また伝建条例であって
も文化財保護法というそれぞれの上位法の規定をうけるという見解
も出されています。
 この場所は神道に隣接し、御嶽、まちなみ館、保育所、診療所に
囲まれ、学校にも接しています。しかし斡旋案が全て拒否されて、
仮設のための整地が始まりましたので、「聖域・文教地区を守る住
民の会」を結成し、わずか2日間で82%の移転反対署名を集めました。
 3月18日には竹富公民館臨時議会が開催され、移転に同意を与え
たとされる個所を削除しましたが、参加議員に10人(他に委任状
4人)の中で発言しなかった3人を除き、全員が「この場所はダメな
のだ」「子孫(ふぁーまー)のためにも仮設も不可」と口にしました。
結論として、平成19年6月6日付けの要請書同意に関しては公民館
議会は反省する。その上で移転同意に関する個所は削除する。と
言うことになりました。
 住民の意思はこれほどはっきりしています。島内の事業を住民が
邪魔していると思われているとしたら、これは全くもって誤りです。
 今となっては観光が竹富島のリーディング産業であるとしたら、
その絶対的観光要素(他に比べるもののない)である町並み景観
を維持するためにも、なによりも精神的基盤としての御嶽と公民館
(まちなみ館)、将来島を支えてくれる子どもたちの保育所・学校、
お年寄りたちが頼りにしている診療所のある地域を、不特定多数の
観光客と多くの車両が跋扈(ばっこ)する、喧騒(けんそう)の場
所にしてはならないとの事からです。
 聞くことによりますと今町議会において代替案も出され、現予定
地は公共の公園用地として予算も計上されているようです。業者は
ぜひそのことを理解してほしいと願うものです。
 “うつぐみ”とは総意に反したことにより擦り寄ることを求める
ような、レベルの低いものに貶(おとし)められたら、西塘様にも
先祖にも顔向けが出来ません。