沈伽羅

今朝の『八重山毎日新聞』に、
宮良永重氏の興味深い文章「沈伽羅さがしの旅」を
見つけました。
「沈伽羅」とは、「じんきゃら」とよみ、
高価な香木のことをいいます。
宮良氏は、八重山古典民謡《古見之浦節》の一節に
「袖振らば里之子/沈伽羅ぬ匂しおる」
という歌詞があり、
その「沈伽羅」に注目しています。
《古見之浦節》は、
「尚敬王時代に、平得目差、大宜味長稔の作といわれている
古見の浦は、公用で与那国島から帰途中、
悪天候となり古見の浦に避難した大宜味が
古見村の美人ブナレーマに介抱され、
その情を交わした2人の別離の悲哀を歌ったもの」です。
それゆえ、一般に先の一節は、里之子との別れに際し、
里之子が袖を振るごとに、その袖に染まった
沈伽羅の匂いが漂ってくると
解釈されています。
沈伽羅について、宮良氏は
「沈香木は、インドや東南アジアのジャングルに見える樹木で、この香料がけがれをとるものとして利用され、また薬品でもあり香薬といわれ、日本における最初、推古天皇時代に淡路島に漂着し、島の人々は長さ2メートル半もあった香木をただの流木と思い火に薪と一緒になげこんでしまった。すると大変かぐわしい匂いのする煙がたちのぼり、驚いた人々は、これを朝廷に献上したといわれている。現在、正倉院にある沈香木は、日本にある沈香のなかでも最大級のものとのこと」
と紹介しています。
さらに
「上質香木のことをどうして伽羅と呼ぶようになったのかは定かではないが、伽羅といえば“すばらしい”とか“すてき”“美しい”などの代名詞とされ、沈香は、香りの種類が特に質の良いものを“伽羅”と呼ぶようである」
と述べています。
ところで、竹富島の《弥勒節》にも「伽羅」が出てきます。
では、6番の歌詞をみてみましょう。
   伽羅ぬ代取るそ    (伽羅の名が与えられるのは)
   鶉目ぬ沈香      (鶉の羽模様の沈香<香木>だけです)
   親ぬ代取るそ     (親の代を継ぐのは)
   初ぬ産み子 初ぬ産み子(最初に生まれた男の子)
   サーサー ユーヤー サースリ サーサー
『芸能の原風景』(改訂増補版)には、
「伽羅」は「香木の一つ。我が国でも珍重された」と
説明されています。
また、「鶉目ぬ沈香」(ウズラミヌジンク)については
「鶉の羽模様に似た木目の沈香、の意。
最も珍重された沈香<香木>」とあります。
それにしても、伽羅の名が与えられのは、
「鶉目ぬ沈香」だけだという
見識はどこから得たのでしょうか。
ますます興味は深まっていきます。
ちなみに、最古の琉歌集『琉歌百控』の
「独節流」(1798年)には
《沈仁屋久節》として、次の2首が記録されています。
○沈や伽羅灯そ 御座敷に出て 躍るわか袖の 匂の塩ら舎
○沈や伽羅留て はなの物語り いつまてん互に あかの匂ひ
                         (YI)

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